はじめに

先週13日、米国と中国は第1段階の貿易合意の詳細で妥結したと発表しました。しかし発表された合意には具体的な数値が明記されておらず、大きな進展とは評価できない内容です。米中双方ともに内政で問題を抱えており、国内向けにアピールを狙ったものと思われます。

米国からの発表

米国側の交渉担当者であるライトハイザーUSTR代表によると、中国は年間500億ドル規模の米国産農産物を購入するよう努めるとコミットメントしたそうです。また、農産物だけでなく、米国からの輸入を2017年実績の倍以上に増やすことに同意したと語っています。
【中国の農産物購入額】
貿易摩擦深刻化以前の240億ドル
今回増量分の160億ドル
努力目標の上積み50ー100億ドル
計500億ドル
【中国の対米輸入額】
米国からのモノやサービスの輸入額を、今後2年間について2017年比で少なくとも2000億ドル増加。2017年実績である1870億ドルの倍以上へ。
【原状回帰条項】
合意に違反があった場合には紛争解決の執行メカニズムに基づき、米中双方が関税を課すことが可能。

今後のスケジュール

合意文書は86ページに及びます。
来年1月初め ライトハイザーUSTR代表と劉副首相がワシントンで署名
その後合意文書を公表
署名30日後 発効

中国は数値を公表せず

中国当局者は13日深夜、記者会見で合意について発表しました。しかしコミットメントの正確な数値についての質問に対しては言明を避けています。数値目標でも合意したのであれば、質問に答えてもよいはずです。言明を避けるということは、具体的数値については合意文書に含まれていないのか、文書化までの間に中国は減額を目論んでいるのかもしれません。

実務面でも疑問が残る

中国が米国から輸入する農産物もモノ・サービスも実績の2倍程度になると米国は発表しています。このような急拡大が果たして可能なのか。港湾設備や倉庫などの受入能力に余力はあるのか疑問が残ります。また、今回の取り決めをどのように検証していくかも不透明です。

トランプ大統領の弾劾が妥結を急がせた

13日の妥結には意外感がありました。最高値圏にある株式市場、堅調な経済成長だけをとれば、米国には妥結を急ぐ理由はありません。一方で中国は共産党が目標とする経済成長率の下限6.0%を割り込む可能性が高まっています。中国には貿易交渉を進展させる意向が強くあります。それではなぜ米国が妥結に踏み切ったか。恐らくトランプ大統領の弾劾決議が関係しているでしょう。同じ13日に下院司法委員会で弾劾訴追決議が可決されており、18日にも訴追となる可能性が高まっています。2020年の大統領選再選を目指すトランプ大統領にとって弾劾訴追はマイナスであり、そのダメージを貿易交渉の成果を演出することによって相殺する狙いがあったのでしょう。

米国は反故にするかもしれない

米国は今回の合意を反故にする可能性があります。弾劾の影響が軽微に留まれば貿易交渉を進める意味が低下します。中国は米国からの輸入額について数値目標の明言を避けており、今なお米中の間に不一致があるように見受けられます。米国にとって中国のスタンスは、合意を破棄するに充分な理由となり得るでしょう。

●根拠となるニュース
トランプ大統領自賛の500億ドルに疑問浮上ー中国の農産物購入目標で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-14/Q2HDHCT0G1KX01

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【この記事の執筆者】

資産形成を日本の文化にすべく活動しているファイナンシャルプランナー。銀行、証券(投信投資顧問、ヘッジファンドのファンドマネージャー)、保険の金融3業態すべてに在籍した経験を持ち、資産形成についてのそれぞれのメリット・デメリットを把握している。