はじめに

NYダウのPER(株価収益率)が22倍を超えました。PERは小さいほど割安とされています。NYダウのPERは過去14-18倍で取引されていたため、現在の水準は割高だとの評価も多くなっています。果たして米国株は割高なのでしょうか。

直近の大型ハイテク株の時価総額、純利益、PERは次のようになります。

企業名 時価総額 純利益 PER
Apple 153兆円 6.3兆円 24倍
Microsoft 152兆円 4.8兆円 32倍
Amazon 113兆円 1.3兆円 89倍
Google 110兆円 3.6兆円 31倍
Facebook 66兆円 2.0兆円 33倍
VISA 47兆円 1.3兆円 35倍
Master card 35兆円 0.9兆円 40倍
Intel 31兆円 2.1兆円 15倍

備考
・時価総額は2020年2月7日終値ベース
・純利益は2019年12月までの12ヶ月合計(TTM)
・PERは時価総額÷純利益TTMで簡易計算
・1ドル109円

PERとは

Price earning ratioの略称で、日本語では株価収益率と言います。PERは、企業の株価と獲得利益の比率を表すもので、株式投資で用いる最もポピュラーな指標です。
PERは株価をP、1株あたり純利益をEPS(次期予想)とすると次のようにして算出できます。
PER = P/EPS  ・・・①
PERは低い方が、株価は割安と見られ、高い方が、株価は割高と見られます。

PERの拡大縮小

PERは一定ではなく、市場環境や企業の状態によって変化します。PERはリスクプレミアムの拡大(縮小)で低下(上昇)します。リスクプレミアムとは、国債利回りの上乗せ金利で、投資家がリスクを取る代わりに要求するリターンのことです。市場に不安材料が多い場合、投資家は株式投資のリスクに見合うリターンを求めるため、リスクプレミアムは拡大しPERは低下します。逆に不安材料が少ない時は、リスクプレミアムは縮小しPERは上昇します。
国債利回りにリスクプレミアムを加えたものが益回り(1株あたり利益を株価で割った値)で、益回りはPERの逆数です。従って、リスクプレミアムが拡大し、国債利回りが不変なら、益回りが上昇するので、PERは低下します。

PERが持つ2つの意味

1)PERは株式投資額を何年分の純利益で回収できるか示す
PERの逆数 = EPS/P
この式の右辺は、会社の利益を時価総額で割ったものと等しくなります。言い換えると、1年間で得られる利益を会社の買収金額で割ったもの、つまり会社買収時の益利回り(買ったお金を何年で回収できるか)になります。そのため、PER20倍というのは、会社を買ったお金を利益で回収するのに20年かかることを意味しています。

2)PERには利益の成長率の観点が含まれている
PERは期待利回りから企業の成長率を引いたものの逆数として考えることもできます。

①式をPについて書き直すと次のようになります。
P = EPS × PER  ・・・②

現在の株価Pが1年後のEPSと1年後の株価に基づいて算出されているとすると、
P = (1年後EPS+1年後株価)/(1+r)
ここでrは割引率を示します。(通常、割引率は、企業が資金調達するために支払うコストである資本コストを用います。)

さらに、1年後の株価を、2年後のEPSと2年後の株価で算出されたとすると、
P = 1年後EPS/(1+r)+2年後EPS/(1+r)2+2年後株価/(1+r)2

これを続けると株価Pは、割引率rを使って次のように表されます。
P = EPS/(1+r) + EPS/(1+r)2 +・・・ + EPS/(1+r)n + n年後の株価/(1+r)n

ここで、企業の利益成長を考え、EPSが成長率gで成長していくと考えると、次のようになります。(ただし r>g とします)
P = EPS/(1+r) + EPS(1+g)/(1+r)2 +・・・ + EPS(1+g)n-1/(1+r)n + n年後の株価/(1+r)n

このときn→∞とすると、n年後の株価は十分小さくなるので、無視して、P = EPS/(r-g)・・・③

さて、ここで②式と③式を比べると
PER = 1/(r-g)  (ただし r > g)となります。
すなわちPERの考え方では、株価は企業の資本コストと成長率を織り込んだ値を示すことになります。
PERが20倍で、資本コストが6%とすると、その企業は1%の成長率で、永久に成長するとみなされていると理解できます。

単純にPERの大小で割安割高は判断できない

PERの値は一般的に10倍台前半までは低いとみなされています。NYダウは歴史的に14-18倍で取引されてきました。しかし、業種に
よってPERの傾向はバラバラでPERの絶対値では株価が割安か割高かは判断できません。PERには、この後に説明するように成長率の観点も含まれているので、成長産業であれば、PERは一般的な水準よりも高くなります。 PERには、このように成長率の観点も含まれているので、成長産業であれば、PERは一般的な水準よりも高くなります。

米国ハイテク株は割高ではない

足元の環境はリスクプレミアムが小さいと投資家は判断しています。米連邦準備制度理事会(FRB)が低金利を維持して景気を支える意思を示しているからです。また、米国のハイテク株は年率20-40%の高成長維持し、さらにサブスクリプションモデルへの移行により利益成長が継続しやすい経営に変化しています。この2つの要因により、過去と比較してPERが拡大しても割高とは言えません。

●根拠となるニュース
Apple
https://www.bloomberg.co.jp/quote/AAPl:USMicrosoft
https://www.bloomberg.co.jp/quote/MSFT:US
Amazon
https://www.bloomberg.co.jp/quote/AMZN:US
Google
https://www.bloomberg.co.jp/quote/Goog:US
Facebook
https://www.bloomberg.co.jp/quote/FB:US
VISA
https://www.bloomberg.co.jp/quote/V:US
Master card
https://www.bloomberg.co.jp/quote/MA:US
Intel
https://www.bloomberg.co.jp/quote/INTC:US
※ディスクレーマー※

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【この記事の執筆者】

資産形成を日本の文化にすべく活動しているファイナンシャルプランナー。銀行、証券(投信投資顧問、ヘッジファンドのファンドマネージャー)、保険の金融3業態すべてに在籍した経験を持ち、資産形成についてのそれぞれのメリット・デメリットを把握している。