はじめに

通貨ユーロは主要通貨に対して弱い展開が継続すると予想します。背景はドイツの政情不安です。現段階でメルケル首相の後に続く後継者が現れず、2021年10月までに予定される次期総選挙では、連立政権樹立に苦慮するものと予想されます。ユーロ加盟国最大のドイツが不安定化すれば、ユーロの信任を揺るがすことになるでしょう。

メルケルの求心力低下

ドイツの現首相はアンゲラ・メルケルです。2005年11月に就任して以降、カリスマ性を発揮し4期約15年間にわたる長期政権を担ってきました。しかし移民政策で失敗し、2017年の総選挙で惨敗、与党のCDU(ドイツキリスト教民主同盟)とCSU(キリスト教社会同盟、バイエルン州のみでCDUの姉妹政党)は両方合わせて33パーセントしか得票率が得られませんでした。これを機にメルケルの求心力が低下、翌2018年10月の地方選では与党CSUの本拠地ミュンヘンを擁するバイエルン州で大敗しています。ヘッセン州では、CDU、CSUと大連合と組んでいた第2党のSPD(社会民主党)が大敗、メルケル氏はその結果を受けて、10月末に党首の辞任と2021年の任期をもって政界を引退する意向を示しました。

極右の躍進

代わりに勢力を拡大させたのが、移民に反対する極右政党AfD(Alternative für Deutschland、ドイツのための選択肢)です。2017年の総選挙で94議席を獲得し野党第1党に躍進しています。AfDはメルケル政権によるギリシャほか欧州連合諸国への救済措置に不満を抱く勢力が中心となり2013年に結成されました。欧州連合(EU)からの脱退を目標とし、ユーロ圏からの離脱とドイツ・マルクの復活を当面の最優先課題に挙げています。

後継者不在

メルケル首相に代わってCDU党首に就任し、事実上の後継候補とされてきたアンネグレート・クランプ=カレンバウアー(AKK)国防相が2月10日に党首を辞任に追い込まれました。カレンバウアー氏は2019年5月に言論の自由を阻害すると受け止められる発言をし、多くの有権者がこれに反発する事態を招いた過去があります。カレンバウアー氏にはメルケルのようなカリスマ性がなく2021年の総選挙は戦えないという機運がCDU内に高まった結果です。新党首の候補者もCDUの支持率を改善するようなカリスマ性を持っているとは言い難く、2021年10月までに予定される次期総選挙で連立政権樹立に苦慮するものと予想します。

政情不安が拡大する可能性

新党首の候補者もカリスマ性を持っているとは言い難く、2021年10月までに予定される次期総選挙でCDUが支持率を改善させる見込みは薄いです。更に悪いことにメルケル政権下でドイツは、戦略的に中国への輸出依存度を高めました。中国経済は構造的に成長鈍化しており、足もとでは新型コロナウイルスのによってドイツ経済が悪影響がを受けると思われます。経済面での逆風も加わり先に挙げたAfDが勢力を拡大することになれば、EU最大の経済規模を誇るドイツでもユーロ離脱のリスクを市場が意識する可能性があり、その際はユーロは敬遠されることになります。

●根拠となるニュース
メルケル首相の独与党CDU、クランプカレンバウアー党首辞任へ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-02-10/Q5H9DFT1UM0W01

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【この記事の執筆者】

資産形成を日本の文化にすべく活動しているファイナンシャルプランナー。銀行、証券(投信投資顧問、ヘッジファンドのファンドマネージャー)、保険の金融3業態すべてに在籍した経験を持ち、資産形成についてのそれぞれのメリット・デメリットを把握している。