20代の資産形成とは?

20代にとって最も重要な資産は自分自身です。皆さんには労働によって将来にわたり収入を産み出す価値があります。自分自身が重要な人的資産なんです。まずは自分への投資を最優先し、人的資産の価値を高めましょう。そして金融商品での資産形成は、リスクが高くても大きな収益が見込める株式中心の構成にすると人的資産とのバランスがとれます。ただし先が長いため、目的を明確化しないと途中で止めてしまうリスクも高いんです。20代の資産形成は、いかにして続けるかも重要なポイントです。まずは今を楽しみ、自分に積極的に投資し、そして良き伴走者を見つけてじっくりと資産形成に取り組みましょう。

自分という資産の価値を高める

「自分自身が資産なのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし皆さんには、労働によって将来にわたり収入を産み出す価値があります。人的資産と表現できるでしょう。一般のサラリーマンを考えれば給料は比較的安定しているため、人的資産は債券のように安全資産に近いと考えることができます。皆さんは退職するまで長期にわたって収入が見込めるため資産価値は大きくなり、既に大きな安全資産を保有していることになります。自己啓発や資格取得など、まずは自分への投資を最優先し、さらに人的資産(安全資産)の価値を高めましょう。

資産形成はバランスが重要

資産形成においては、リスク資産と安全資産をバランスよく組み合わせることがポイントです。ポートフォリオ(資産の組み合わせ)の構成が、皆さんのリターンを決定付ける最大のファクターになるのです。それではどのようにポートフォリオ構築を行っていけばよいのでしょうか。
皆さんが保有する資産全体を、人的資産と金融資産の合計と考えれば、金融資産の構成は自分の人的資産を考慮した上で決めるべきだと言えます。皆さんは人的資産(安全資産)が大きいため、金融資産はリスク資産の比率を高めることが出来ます。金融商品による資産形成は、リスクが高くても大きなリターンが見込める株式中心にすることで人的資産とのバランスがとれますよ。

目的と目標の違い

皆さんの資産形成を成功させるために、目的と目標をしっかりと区別しましょう。目標とは、目的を達成するためのステップです。目的を達成するために目指すべき行動や、設定した途中経過、必用な成果が目標となります。目的が無い目標、言い換えると目標が目的化してしまうと目標達成は困難です。例えば「偏差値の高い大学に入る」、「大企業に入社する」、「1000万円の金融資産を形成する」などは、どんな目的のための目標なのか、目標達成のその後にどんな未来があるのかが明確でないと、途中で挫折してしまったり、達成しても燃え尽きてしまうこともあります。
皆さんの目的はなんですか?

ライフイベントの確認

目的を明確化するためにライフイベントを整理してみるのもおすすめです。
自分のライフイベント:結婚、出産、車購入、住宅購入、リフォーム、退職、施設入所など
お子様のライフイベント:入園・入学、結婚、住宅購入など
親御さんのライフイベント:同居、介護、施設入所など
皆さんの今後予想されるライフイベントを書き出してみて、どのくらいお金が必用なのか確認してみましょう。盲点があるとせっかくの努力が報われないので、多くのアドバイス経験があるファイナンシャル・プランナーに相談してみるのも良いですよ。

前提条件を確認する

長寿化は急速に進んでいます。みなさん90歳で存命している確率をご存知ですか?最新の生命表(平成28年版)によると、男性の4人に1人、女性ではなんと2人に1人が90歳を迎えています。100歳近い親族がいる方も今や珍しくないですよね。人生100年時代はすぐそこまで来ているといっても過言ではないでしょう。

人口減少経済に突入していることもこれまでとは異なります。日本の総人口は2008年の1億2,808万人(※1)をピークに減少傾向になっており、2040年には18歳以上60歳未満の人口が約4,900万人、60歳以上の人口が4,700万人とほぼ拮抗すると見込まれています(※2)。日本の年金制度は修正賦課方式と言われ、現役世代の年金保険料が年金世代の受給に充てられているため、制度を維持するためには以下の4つの選択肢のどれか、もしくは組み合わせが必用になります。
(ⅰ)平均年金月額(受給)の引下げ
(ⅱ)支給開始年齢の引上げ
(ⅲ)年金保険料(率)の引上げ
(ⅳ)国民総生産の増大政策

いたずらに不安を煽るつもりはないのですが、(ⅳ)国民総生産の増大政策はコントロールできるものではありませんね。しかも人口が減少する社会では、国民総生産の増大はかなり困難でしょう。年金制度を持続させるには(ⅰ)平均年金月額(受給)の引下げ、(ⅱ)支給開始年齢の引上げ、(ⅲ)年金保険料の引上げの実施が必要になってしまうんです。(ⅰ)はマクロ経済スライドによって事実上導入され、(ⅱ)、(ⅲ)はすでに過去に実施されています。今後も平均年金月額の引き下げや、支給開始年齢の引上げは避けられないのではないでしょうか。

厚生労働省によると、経済環境を保守的にみた場合の所得代替率は40%程度にまで低下すると試算されています

(※1)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200524&tstat=000000090001&cycle=0&tclass1=000000090004&tclass2=000001051180
(※2)
国立社会保障人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf

これまでの常識はこんな感じでした

人生80年、60歳定年とすると、勇退後のセカンドライフ期間は20年になります。退職一時金支給額の平均(※3)を約2,000万円、年金の所得代替率(※4)60%超とすると、退職金と年金、そしてある程度の貯蓄があればセカンドライフ資金は賄えました。さらに1990年頃をピークとした不動産バブル以降はデフレ時代であったことを考慮すると、積極的な運用をするより価格変動リスクを抑えた運用、日本人の個人金融資産の51.1%(2017年9月時点)を占める預貯金に預けておけば良かったことになります。

・夫婦2人の場合

<支出>
ゆとりある老後生活費(※5)35万円
<収入>
夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合の年金約22万円(※6)
<不足額>
(35万円-22万円)×12ヶ月×20年間=約3,100万円
退職一時金が2,000万円とすると、貯蓄が1,100万円程度あればセカンドライフ資金は足りたことになりますね。

・単身の場合

<支出>
ゆとりある老後生活費(※5)25万円
<収入>
年金約15万円(※6)
<不足額>
(25万円-15万円)×12ヶ月×20年間=約2,400万円
退職一時金が2,000万円とすると、貯蓄が400万円程度あればセカンドライフ資金は足りたことになりますね。

退職一時金支給額の平均(※3)
厚生労働省退職給付(一時金・年金)の支給実態
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/08/3d.html
年金の所得代替率(※4)
年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの
平成26年財政検証結果レポート ―「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」(詳細版)―
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093204.html
ゆとりある老後生活費(※5)
生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/7.html
ゆとりある老後生活費と現役男子の手取収入額とほぼ同等
単身者は夫婦2人の7割と仮定
(※6)年金受給額の目安
厚生労働省「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

そして20代の資産形成新常識はこうなりつつあります

まずは自己啓発や資格取得など、自分への投資が最優先です。そのうえで将来セカンドライフにどれくらいの資金が必要かを考えてみます。人生100年、65歳定年とすると、勇退後のセカンドライフ期間は35年になります。退職一時金支給額の平均(※1)は約2,000万円のまま変わらないとし、年金の所得代替率(※2)40%と仮定すると、勇退前だけでなく勇退後も資産運用・資産形成が必用になってくるようです。

・夫婦2人の場合

<支出>
ゆとりある老後生活費(※3)35万円
<収入>
夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合の年金約14万円(所得代替率40%の場合)
<不足額>
(35万円-14万円)×12ヶ月×35年間=約9,000万円
退職一時金が2,000万円とすると、あと7,000万円あればゆとりと安心をもってセカンドライフが楽しめることになりますね。

単身の場合

<支出>
ゆとりある老後生活費(※3)25万円
<収入>
年金約10万円と仮定
<不足額>
(25万円-10万円)×12ヶ月×35年間=約6,300万円
退職一時金が2,000万円とすると、あと4,300万円あればゆとりと安心をもってセカンドライフが楽しめることになりますね。

20代の資産運用・資産形成

ご夫婦2人の場合を例にとって考えます。退職金の他に7,000万円あれば豊かなセカンドライフが送れる結果となっていたので、お一人あたり3,500万円ですね。年利回り7%が確保できた場合に65歳時点で3,500万円を確保するための必要積立額をみてみます。
20歳 積立期間45年 毎月積立9,229円
21歳 積立期間44年 毎月積立9,928円
22歳 積立期間43年 毎月積立10,683円
23歳 積立期間42年 毎月積立11,499円
24歳 積立期間41年 毎月積立12,381円
25歳 積立期間40年 毎月積立13,334円
26歳 積立期間39年 毎月積立14,366円
27歳 積立期間38年 毎月積立15,483円
28歳 積立期間37年 毎月積立16,694円
29歳 積立期間36年 毎月積立18,007円
参考
35歳 積立期間30年 毎月積立28,689円

いかがでしょうか。自分への投資をした上で、これくらいの積立額ならなんとかなるなあ、と思った方が多いと思います。将来に希望が持てますね!

ポイント

1.すぐに始める
1年追うごとに毎月の積立額は増加していきます。複利の効果が働くので、始めるのは早ければ早いほど負担が少なくてすみます。29歳の方は20歳時点で始めるのと比較して積立額は約2倍必要ですが、参考で示したとおり35歳から開始するより1万円以上も少なくて済むんです。
2.積立額の確保
それでも積立額を確保するのは難しいなあとお考えの皆さん。そんなときはファイナンシャル・プランナーに相談してみてください。
3.年利回り7%の可能性のある積立
世界の経済成長率はおおよそ3.5%です。新興国で約5.0%です。7%を目指すとなるとインデックスファンド(※7)では難しいですね。皆さんには40代や50代の方々と違って時間という大きな武器があるので、長期的な視野に立って比較的高いリスクの代わりに高いリターンが期待できる商品に投資をしていきましょう。具体的な商品についてはファイナンシャル・プランナーに相談してみてください。

インデックスファンド(※7)

インデックスファンドは、日経平均株価・TOPIX(東証株価指数)などの指数と同じように動くよう設計された投資信託の一種です。パッシブファンドとも言われます。投資信託の購入時の手数料が無料(ノーロード)のものが多く、保有時にかかる手数料(信託報酬)が、アクティブファンドと比較して低いのが特徴です。手数料が低い理由は、指数に組み入れられている企業にそのまま投資をするため、銘柄の調査、銘柄の選定にコストがかかっていないからです。

まとめ

20代の資産形成は、まずは自分に投資をして人的資産の価値を高めることが重要です。その上で金融商品を用いて、しっかりとリスクを取って運用しましょう。ただし目的が曖昧だと、皆さんには時間があるだけに途中でやめてしまう可能性もあります。信頼できるアドバイザーを見つけて良き伴走者として資産形成を継続していきましょう。セカンドライフに注目した場合、人口減少時代のなかでは、これまでのように公的年金をメインとしたものではなく、自分自身で資産形成を実施することが必要になってきています。

【この記事の執筆者】

資産形成を日本の文化にすべく活動しているファイナンシャルプランナー。銀行、証券(投信投資顧問、ヘッジファンドのファンドマネージャー)、保険の金融3業態すべてに在籍した経験を持ち、資産形成についてのそれぞれのメリット・デメリットを把握している。