30代の資産形成

30代の資産形成とは

30代は資産形成の大きな岐路です。資産形成に対する考え方・取り組みが人によってこれほど大きく異なる年代は、相談をお受けしていても他にありません。まるで他人事のように考えている方もいれば、将来に向けて着々と準備をすすめている方もいらっしゃいます。また、必要性について感じているものの行動に移していない方も多いです。

今後65歳定年制が定着すると仮定すれば、皆さんは最低でも26年、長ければ35年の積立期間が確保できます。資産形成をこれから始める方はどんな方法が自分に合っているか、すでに実施されている方は自分が思い描いた結果が得られる内容になっているか見直してみましょう。ただし先が長いため、目的を明確化しないと途中で止めてしまうリスクも高いんです。

30代の資産形成は、どんな方法で実行するかと同じくらい、いかにして続けるかが重要なポイントです。まずは今を楽しみ、そして良き伴走者を見つけてじっくりと資産形成に取り組みましょう。

目的と目標の違い

皆さんの資産形成を成功させるために、目的と目標をしっかりと区別しましょう。目標とは、目的を達成するためのステップです。目的を達成するために目指すべき行動や、設定した途中経過、必用な成果が目標となります。目的が無い目標、言い換えると目標が目的化してしまうと目標達成は困難です。

例えば「偏差値の高い大学に入る」、「大企業に入社する」、「1000万円の金融資産を形成する」などは、どんな目的のための目標なのか、目標達成のその後にどんな未来があるのかが明確でないと、途中で挫折してしまったり、達成しても燃え尽きてしまうこともあります。

資産運用や資産形成に関してのメディアや記事の中には、「まずは100万円を目標に積み立てましょう!」や「老後のために3000万円貯めましょう!」などと書かれているものがあります。

前者についてはなんのための100万円か不明確なので、途中でやめてしまうケースがでてきます。後者は“老後のために”とあるから目的なんじゃないの?と思われるかもしれませんね。“老後のために”が目的になるには“どんな老後か”がポイントになります。「都心で便利な生活を謳歌したい」、「郷里や田舎でゆったりと過ごしたい」、「暖かい海外に移住したい」、「ペットに囲まれて生活したい」など、自分が思い描くセカンドライフを明確にすることで目的になります。

ライフイベントの確認

目的を明確化するためにライフイベントを整理してみるのもおすすめです。
自分のライフイベント:住宅購入、結婚、出産、車購入、退職、リフォーム、施設入所など
お子様のライフイベント:入園・入学、結婚、住宅購入など
親御さんのライフイベント:同居、介護、施設入所など

皆さんの今後予想されるライフイベントを書き出してみて、どのくらいお金が必用なのか確認してみましょう。盲点があるとせっかくの努力が報われないので、多くのアドバイス経験があるファイナンシャル・プランナーに相談してみるのも良いですよ。

前提条件を確認する

長寿化は急速に進んでいます。みなさん90歳で存命している確率をご存知ですか?最新の生命表(平成28年版)によると、男性の4人に1人、女性ではなんと2人に1人が90歳を迎えています。100歳近い親族がいる方も今や珍しくないですよね。人生100年時代はすぐそこまで来ているといっても過言ではないでしょう。

人口減少経済に突入していることもこれまでとは異なります。日本の総人口は2008年の1億2,808万人(※1)をピークに減少傾向になっており、2040年には18歳以上60歳未満の人口が約4,900万人、60歳以上の人口が4,700万人とほぼ拮抗すると見込まれています(※2)。日本の年金制度は修正賦課方式と言われ、現役世代の年金保険料が年金世代の受給に充てられているため、制度を維持するためには以下の4つの選択肢のどれか、もしくは組み合わせが必用になります。
(ⅰ)平均年金月額(受給)の引下げ
(ⅱ)支給開始年齢の引上げ
(ⅲ)年金保険料(率)の引上げ
(ⅳ)国民総生産の増大政策

いたずらに不安を煽るつもりはないのですが、(ⅳ)国民総生産の増大政策はコントロールできるものではありませんね。しかも人口が減少する社会では、国民総生産の増大はかなり困難でしょう。年金制度を持続させるには(ⅰ)平均年金月額(受給)の引下げ、(ⅱ)支給開始年齢の引上げ、(ⅲ)年金保険料の引上げの実施が必要になってしまうんです。(ⅰ)はマクロ経済スライドによって事実上導入され、(ⅱ)、(ⅲ)はすでに過去に実施されています。今後も平均年金月額の引き下げや、支給開始年齢の引上げは避けられないのではないでしょうか。

厚生労働省によると、経済環境を保守的にみた場合の所得代替率は40%程度にまで低下すると試算されています

(※1)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200524&tstat=000000090001&cycle=0&tclass1=000000090004&tclass2=000001051180
(※2)
国立社会保障人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf

これまでの常識は通用しない

人生80年、60歳定年とすると、勇退後のセカンドライフ期間は20年になります。退職一時金支給額の平均(※3)を約2,000万円、年金の所得代替率(※4)60%超とすると、退職金と年金、そしてある程度の貯蓄があればセカンドライフ資金は賄えました。さらに1990年頃をピークとした不動産バブル以降はデフレ時代であったことを考慮すると、積極的な運用をするより価格変動リスクを抑えた運用、日本人の個人金融資産の51.1%(2017年9月時点)を占める預貯金に預けておけば良かったことになります。

・夫婦2人の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※5)35万円
<収入>
夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合の年金約22万円(※6)
<不足額>
(35万円-22万円)×12ヶ月×20年間=約3,100万円
退職一時金が2,000万円とすると、貯蓄が1,100万円程度あればセカンドライフ資金は足りたことになりますね。

・単身の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※5)25万円
<収入>
年金約15万円(※6)
<不足額>
(25万円-15万円)×12ヶ月×20年間=約2,400万円
退職一時金が2,000万円とすると、貯蓄が400万円程度あればセカンドライフ資金は足りたことになりますね。

退職一時金支給額の平均(※3)
厚生労働省退職給付(一時金・年金)の支給実態
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/08/3d.html

年金の所得代替率(※4)
年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの
平成26年財政検証結果レポート ―「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」(詳細版)―
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093204.html

ゆとりある老後生活費(※5)
生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/7.html
ゆとりある老後生活費と現役男子の手取収入額とほぼ同等
単身者は夫婦2人の7割と仮定

(※6)年金受給額の目安
厚生労働省「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

30代の資産形成新常識だとこうなっていきます

人生100年、65歳定年とすると、勇退後のセカンドライフ期間は35年になります。退職一時金支給額の平均(※1)は約2,000万円のまま変わらないとし、年金の所得代替率(※2)40%と仮定すると、勇退前だけでなく勇退後も資産運用・資産形成が必用になってくるようです。

・夫婦2人の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※3)35万円
<収入>
夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった場合の年金約14万円(所得代替率40%の場合)
<不足額>
(35万円-14万円)×12ヶ月×35年間=約9,000万円
退職一時金が2,000万円とすると、あと7,000万円あればゆとりと安心をもってセカンドライフが楽しめることになりますね。

・単身の場合
<支出>
ゆとりある老後生活費(※3)25万円
<収入>
年金約10万円と仮定
<不足額>
(25万円-10万円)×12ヶ月×35年間=約6,300万円
退職一時金が2,000万円とすると、あと4,300万円あればゆとりと安心をもってセカンドライフが楽しめることになりますね。

30代の資産運用・資産形成
ご夫婦2人の場合を例にとって考えます。退職金の他に7,000万円あれば豊かなセカンドライフが送れる結果となっていたので、お一人あたり3,500万円ですね。年利回り7%が確保できた場合に65歳時点で3,500万円を確保するための必要積立額をみてみます。
30歳 積立期間35年 毎月積立19,433円
31歳 積立期間34年 毎月積立20,982円
32歳 積立期間33年 毎月積立22,677円
33歳 積立期間32年 毎月積立24,503円
34歳 積立期間31年 毎月積立26,504円
35歳 積立期間30年 毎月積立28,689円
36歳 積立期間29年 毎月積立31,079円
37歳 積立期間28年 毎月積立33,696円
38歳 積立期間27年 毎月積立36,569円
39歳 積立期間26年 毎月積立39,726円
参考
45歳 積立期間20年 毎月積立67,188円

ポイント

1.すぐに始める
1年追うごとに毎月の積立額は増加していきます。複利の効果が働くので、始めるのは早ければ早いほど負担が少なくてすみます。39歳の方は30歳時点で始めるのと比較して積立額は約2倍必要ですが、嘆く必要はないですよ。参考で示したとおり、45歳から開始するより約2万7,000円も少なくて済むんです。

2.積立額の確保
これだけの積立額を確保するのは難しいなあとお考えの皆さん。そんなときはファイナンシャル・プランナーに相談してみてください。

3.年利回り7%の可能性のある積立
世界の経済成長率はおおよそ3.5%です。新興国で約5.0%です。7%を目指すとなるとインデックスファンド(※7)では難しいですね。皆さんには40代や50代の方々と違って時間という大きな武器があるので、長期的な視野に立って比較的高いリスクの代わりに高いリターンが期待できる商品に投資をしていきましょう。具体的な商品についてはファイナンシャル・プランナーに相談してみてください。

インデックスファンド(※7)

インデックスファンドは、日経平均株価・TOPIX(東証株価指数)などの指数と同じように動くよう設計された投資信託の一種です。パッシブファンドとも言われます。投資信託の購入時の手数料が無料(ノーロード)のものが多く、保有時にかかる手数料(信託報酬)が、アクティブファンドと比較して低いのが特徴です。手数料が低い理由は、指数に組み入れられている企業にそのまま投資をするため、銘柄の調査、銘柄の選定にコストがかかっていないからです。

まとめ

30代の資産形成は、まずは時間を味方につけることが重要です。1日でも早く資産形成を始めることで必要な積立額が変わってきます。また、積立期間が長期になることで、比較的ハイリスク・ハイリターンの商品中心に配分することのリスクが低減します。人口減少時代のなかでは、これまでのように公的年金をメインとしたものではなく、自分自身でセカンドライフの資産形成を実施することが必要になってきています。

次回は20代の資産形成についてお話します。

【この記事の執筆者】

資産形成を日本の文化にすべく活動しているファイナンシャルプランナー。銀行、証券(投信投資顧問、ヘッジファンドのファンドマネージャー)、保険の金融3業態すべてに在籍した経験を持ち、資産形成についてのそれぞれのメリット・デメリットを把握している。